Research Abstract |
本研究では,ファインセラミックスに比較的粗い研削加工を施す場合に,仕上面下の脆弱化層の生成機構の解明ならびにその深さの予測を目的とし,構造用ファインセラミックスの代表である常圧焼結窒化けい素を7種類の異なる形状の円錐成形ダイヤモンド切れ刃で単粒研削した.その結果,砥粒切れ刃との干渉によってファインセラミックスの仕上面直下にマイクロクラック層が形成され,更にその下には研削方向に沿って仕上面からほぼ垂直に伝播するメディアンクラックが残留する層が存在することが確認された.さらに本研究では,線形破壊力学に基づいてクラック層深さを切削抵抗,切削溝深さ,影響領域係数および種々の材料特性値の関数として表す手法を提言した.そして,仕上面の下に残留するクラック層の深さを求める過程において唯一その値が定かでない影響領域係数を円弧形切削実験結果から明らかにした.その結果,影響領域係数は切れ刃の干渉形状に大きく関わっており,切れ刃の干渉形状が球の場合には先端丸み半径に応じた溝深さの指数関数に従って溝深さの増加と伴に減少し,干渉形状が円錐へ移ると切れ刃の頂角に応じた一定の値へ連続的に移行することが明らかになった.この解析手法を研削加工における個々の砥粒切れ刃の切削現象に適用することによって各研削工程における仕上面下の脆弱化層の規模を予測することが可能となり,続く仕上げ工程における加工条件ならびに加工量の設定に大きく貢献することが期待できる.
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