Research Abstract |
研究代表者は歯車の歯元表面に初期き裂が存在していると仮定し,初期き裂長さをパラメーターとして,破壊力学に基づく強度評価法を提案した.本研究の目的は初期き裂の物理的意味を解明し,初期き裂長さと表面状態の関係を明らかにすることである. 今年度は計画通り,FIB(Focused Ion Beam)加工用歯車支持装置を試作し,歯元に微小切欠きを導入して歯車の曲げ疲労実験を行い,切欠き深さによる曲げ疲労強度の変化を調べた.FIB加工は微小な切欠きを導入することが可能であり,また,切欠き部に機械或いは放電加工のような熱と残留応力を与えないので,切欠きを人工初期き裂と見なすことができると考える.これまでには,浸炭歯車の歯元表面に幅10μm,長さ50μm,深さ15〜50μmの微小切欠きを導入することに成功し,それらの歯車を用いて曲げ疲労実験を行った.本研究の最終の目的である表面状態と初期き裂の関係の確立に達するには更に実験を重ねる必要あると思われるが,今年度で得られた実験結果によれば,切欠き深さは20μm以下では疲労強度の低下は見らず,切欠き深さは20μm以上になると深さの増加に伴って曲げ強度は低下し,特に35μm以上になると疲労強度の低下は急激になることが分かった.したがって,本実験歯車の表面に長さ約20μmの初期き裂が存在していることが考えられよう.今後は引続き異なる表面処理歯車を用いて実験を行い,初期き裂長さと表面状態の関係を明らかにし,破壊力学に基づく強度評価法の実用化を進めるつもりである.
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