Research Abstract |
研究代表者らの独自の発明に基づく,気-液-液系装置によって,従来その生成が非常に困難であったミリオーダ粒径の中空液滴ならびに固体球殻の連続生成が初めて可能になり,球状機能性液体膜としての応用や,金属カプセルの液相焼結による新材料の開発が期待されるようになった.しかし,中空液滴界面の変形挙動がそれらの応用範囲を限定するので,その解明が切望されていた.本研究は,中空液滴界面の同心球化に関するものであり,流動する中空液滴界面の変形挙動を理論ならびに実験の両面から明らかにしようとしたものである.この研究によって,中空液滴の変形度を種々の流動条件および液体の物性値の条件において簡便に予測することが可能となり,安定な同心球状中空液滴の連続生成に必要不可欠な知見を得ることができた.さらに,申請者らは独自の発明に基づく気-液-液系中空液滴生成装置を保有していたので,種々の流動条件における実験結果との厳密な対比により,ここで開発した薄膜理論モデルや移動境界値問題における新しい数値解析手法の妥当性の検討を行い,本研究結果が十分実用に供する事を実証した.このような知見に基づき,今後改良される気-液-液系装置を用いれば,生成される中空液滴ならびに固体球殻は均一な同心球状膜を有し,等方的で高い機能性を有することが期待される.本研究は,ここで開発された気-液-液系装置にのみ利用可能なものではなく,NASAによる二重鉛管を用いた球殻生成装置,化学反応を利用したマイクロカプセルの生成技術,数値流体力学における移動境界値問題および赤血球の理論モデルなどの発展と密接に関連しており,流体科学における先端技術分野を開拓するものである.
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