Research Abstract |
本研究の主眼は,乱流拡散火炎の熱輸送において発現することがある「逆こう配型拡散現象」の詳細を明らかにし,その原因を特定することにある.逆こう配型拡散現象は,通常の乱流モデルが破綻する典型的な現象である.したがって,その本質を解明することは,乱流モデルが現在直面している問題を解決する糸口となる可能性がある.また,ここで得られるデータは,普遍性の高い乱流燃焼モデルの開発およびその評価に利用できる基礎資料となる. 乱流の熱輸送機構の解明には,速度と温度の相関量に関する情報が必要である.そのために温度計測の高精度化がいま要求されている.当該年度の前半では,極細線熱電対を用いて,乱流燃焼場の変動温度を正確に測定する手法の開発をおこなった.変動温度の測定では,熱電対の応答時定数を正しく測定あるいは推定することが,計測全体の精度を高める上で極めて重要である.本研究では,直径の異なる二本の熱電対からなる温度プローブ(二線式熱電対)を用いて,高い信頼性で時定数を推定する合理的な手法を考案した.この結果,熱電対の幾何学的な形状を知ることなく,時定数の推定と応答補償を同時に行うことが可能となった.さらに,これまで不可能とされていた時定数の変動とふく射の影響を考慮に入れた応答補償が実現できた. 現在,レーザー流速計と上記の二線式熱電対を組み合わせることで,速度と温度の高精度同時測定法を実現するべく装置の開発をおこなっている.これを基礎として,燃焼場における乱流熱流束の挙動を正確に測定する技術が確立できれば,乱流燃焼場における熱輸送機構の解明および乱流燃焼のモデリングにとって大きな前進となる.
|