Research Abstract |
準同型信号処理は,画像の強調,音声分析,地震波探査等,広範な応用を有する非線形信号処理として良く知られている.代表的な準同型信号処理手法として,複素ケプストラム法が著名であり,従来より多くの研究が行われている.しかし,信号処理システムの最適設計法,多次元への拡張,膨大な計算量の克服等については必ずしも十分な結果が得られているとは云えない. 本調査研究では,準同型信号処理が抱えるこれらの問題点を根本的に解決することを目的とし,まず,複素ケプストラム法を多次元に拡張する際、最大の障害となっている多次元信号の連続位相(Unwrapped phase)補償問題について検討を行ない,その回答を示すとともに,これを応用して,従来,一般的な解法が知られていなかった1変数複素多項式の零点分布決定問題が完全に解決されることを示すとともに,連続位相に基づくシステムの安定性判別法を提案している. まず,これまで形式的に定義されていた有限な広がりを持つ多次元信号の連続位相が1次元有限長複素信号の連続位相を表す有限なルベ-グ積分値の有限和で与えられることを明らかにしている.次に,1次元有限長複素信号の連続位相は,実周波数域で非零な1次元複素信号の連続位相と1次元複素対称信号の連続位相の和として表現できることを示している.更に,1次元複素対称信号の連続位相は,対称の中心次数を比例定数とする線形位相で与えられることを明らかにし,多次元複素信号に対してその連続位相を導出する問題が,実周波数域で非零な1次元有限長複素信号の連続位相を導出する問題に帰着されることを示している.実周波数域で非零な1次元有限長複素信号については,これを平行移動した信号(半多項式という)の実部と虚部と各々(0,2π)の範囲で同一の符号を持つωの2つの実連続関数を与えることによって,順次[0,2π]上で広義のスツルム列が構成可能であることを示した後,このスツルム列の符号変化数を用いて[0,2π]の範囲で連続位相が正しく算出可能であることを示す“連続位相の表現定理"を導いている. なお,これまで実周波数域で非零な多次元信号の多次元線形位相成分を正しく決定する問題は依然として未解決であった.また,一般の1変数複素多項式の零点分布決定問題も重要な未解決問題であることが指摘されていた.本研究では,これら2つの未解決問題も提案する多次元連続位相導出アルゴリズムを用いて直ちに解決されることも明らかにしている.更に,これらの結果に基づき,算出された連続位相に基づくシステムの安定性判別法を提案し,これが有効であることを数値例により,確認している.
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