Research Abstract |
本研究の目的は,一般廃棄物としてその処理に未だ多くの問題点を抱えている鉄を利用することによって酸性化した土の工学的性質を改善することにある。そこで,【平成7年度】には鉄粉を添加した酸性土の基本的な性質および強度・変形特性を詳細に調べることに重点を置いて各種の室内試験を行った。実験には市販の粉末試料であるカオリン(pH8.8:初期状態)に硫酸を所定の量滴下してpHを8.8,7,5,3に調整した試料を用いた。供試体の作製は静的締固めにより行い,温度20,40℃の恒温器内で最長28日間養生した後一軸圧縮試験を行った。得られた結果より,養生時の温度が高いほど強度はおおきくなるものの,pHや飽和度の違いによる差はとくに認められなかった。以前ベントナイトを用いて行った同様の実験において,pHと強度・変形特性とが密接に関連しているという結果を得ており,このような違いが生じた原因としては試料を構成する粘土鉱物の種類を挙げることができる。これらの結果を踏まえた上で,酸性土に鉄粉を混合した試料の強度・変形特性を調べることにした。酸性試料に鉄粉を添加すると試料のpHはアルカリ側へと移行し,その傾向にはpHや温度が深く関与していることが明らかとなった。しかし,強度については今回行った実験条件の範囲内では必ずしも増加するとは限らず,鉄粉を添加することによる効果を提示するまでには至らなかった。この理由の1つとして,化学反応の進行にともなう水素の発生を挙げることができ,この点については今後も研究を継続していく予定である。また,【安定材(セメント,石灰)】と【アルカリ雰囲気材(石炭灰,製紙スラッジ焼却灰)】とを添加した酸性土の強度発現過程について検討を行ったところ,安定材の種類や量あるいは養生時の温度や日数によって強度発現は大きく異なることが示された。いずれにしても,酸性土は現在から将来にわたる重要な研究課題であり,今後も研究を継続していく必要がある。
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