Research Abstract |
13種類のメソフェースピッチ(MP)系,4種類のポリアクリロニトリロ(PAN)系繊維に対して,単繊維の圧縮強度・破壊特性を検討するためにTensile recoil試験及びループ試験を行った.また,弾性係数の測定を行った.一般には縦弾性率を用いることが多いが,ここでは断面内結晶化分布をより反映し得ると思われるねじり剛性を自作したねじり振動試験機により測定した.さらに各繊維の結晶化特性をX線回折により検討した.各繊維の大まかな結晶構造を比較するために,θ-2θ法による高角回折を,さらに繊維表面から内部にわたる結晶化の分布を検討するために,小角回折を繊維側面に対して行った.その結果以下の知見を得た. 1)Tensile recoil試験により得られた各繊維の圧縮強度は,縦弾性率と良い関係があり,複合材料で得られた圧縮強度と繊維弾性率の結果と一致した. 2)ループ試験では,圧縮側繊維表面に“ずれ"が認められ,繊維の圧縮損傷の初期過程を再現できた.ただし,この圧縮損傷が見られたのは,縦弾性率の高いMP系繊維のみであった. 3)各繊維の縦弾性率とねじり剛性の関係より供試材は2種類に分類できた.1つは両者に比例関係があるもので,もう1つは縦弾性率に依存することなく低いねじり剛性を示すものである. 4)上記3)の分類は,2)で圧縮損傷が見られた繊維と見られなかった繊維と一致した.また,X線回折の結果との対応では,アモルファス比率の高い繊維,低い繊維と対応している. 5)小角回折の結果より,結晶化の低い繊維では,表面より内部に至り結晶化が進んでいることがわかった.この傾向は引張強度の寸法効果に関する検討から予想された結果と一致する.
|