Research Abstract |
1.テルピリジンの錯形成に基づく配座変化を蛍光スペクトルの変化として取り出す目的で,2,2'-6'2"-テルピリジンの6位と6"位を1-ピレニル基で置換した化合物(1)を合成した.また,対照化合物として6,6"-ジメチル置換テルピリジン(2),及び6位に1-ピレニル基を置換したビピリジン(3)の合成を行った. 2.吸収・蛍光スペクトルより,1の基本的な電子構造を理解した.1は3と同様のスペクトルを示し,基底状態,励起状態で分子内でのピレン部位間に相互作用はない.また,標準蛍光物質として硫酸キニ-ネを用い,1の相対蛍光量子収率が0.59という比較的大きい値であることを得た. 3.種々のアルカリ,アルカリ土類金属イオン,遷移金属イオンを添加し,種々スペクトル測定より錯形成について測定した.アルカリ,アルカリ土類金属イオンの添加ではそのスペクトルに変化は現れなかったが,2価の銅イオンやニッケルイオンの添加において,420nmに新たな吸収がみられ,蛍光スペクトルの消光が見られた.また,通常,2,2'-6'2"-テルピリジンと1:2錯体を形成するルテニウムイオン添加において,吸収・蛍光スペクトルに影響が現れなかった. 4.電子アクセプター分子であるDDQを有機ゲストとして用い,ピレン部位との電荷移動相互作用による,エキシプレックス形成を試みたが,大きなスペクトル変化は見られなかった. 5.テルピリジン部位との酸・塩基反応後の陰イオン・陽イオン間の水素結合相互作用による包接体形成を期待し,ベンゼンスルホン酸を添加し,各種スペクトル測定を行った.吸収スペクトルでは420nmに新たな吸収が得られ,蛍光スペクトル測定においてモノマー発光の消光とエキシプレックス発光と考えられる520nmの新たなる発光を示した.この発光強度は対照化合物である3でも得られたが,その強度は1の方がより顕著であった. 6.会合形態について調査するため,ゲストでベンゼンスルホン酸のパラ位の置換基を変化させ,その立体効果の違いによるスペクトル変化を測定した.顕著な違いが現れなかったことより,ゲストを挟み込んだサンドイッチ構造をとっている可能性は低いことが確認された.
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