Research Abstract |
近年,木の形を崩さず,切屑を生じず,目的に応じた木材の圧縮成形加工(例えば,丸太の円柱或いは角柱化,木材表面の圧密化,木質部材の曲面化など)が社会的な注目を浴びた。この様な加工の基礎となる木材の水分・熱・塑性化特性を解明することを本研究の目的とした。即ち,高温,高含水率状態にある木材を近似的に粘弾性材料と考え,有限要素法による弾塑性構造解析を行うことにより,また,実験を通して,特定条件にある木材の力学的性質を明らかにしたい。これらが可能となれば,応用価値が極めて高く,木材の成形加工工程のスケジュールの設計に役立つと思う。 一方,これまでの中等教育課程での木材加工教育の殆どは,切削加工だけで行ってきたが,これからは,木材加工に関する最新技術の導入,例えば,木材の水分・熱・塑性化特性を生かした新しい圧縮成形加工の教科への取り組みも非常に重要ではないかと考えられる。 本年度の科学研究費補助金により,万能材料強度試験機に荷重・変位の連続測定記録装置を増設することができ,それらに合わせて,熊本大学教育学部技術科に既存の電子レンジを用いて,木材の塑性加工に関する影響因子を明らかにするための実験を行った。具体的には,幾つ含水率状態にある幾種の木材試験体を,ある条件のマイクロ波照射加熱を受けた場合における圧縮応力-ひずみ曲線を捕え,木材の圧縮弾性係数,降伏荷重などの力学的特性に及ぼす樹種,含水率,マイクロ波の照射加熱条件の影響を調べ,水分と熱による木材の軟化機構,塑性化特性を解明した。また,それの引き続きとして,実験で求めたデータによって構造解析に必要な材料定数を定め,熊本大学総合情報処理センターに既存の大型計算機を用いて,コンピューターシミュレーションを行い,圧縮成形過程における木材の変形挙動,材料内部の応力分布を数値解析を行い,木材の水熱による圧縮成形加工に必要なデータベースを作る予定である。 本研究は木材の圧縮成形加工限度に対する予測,適切な加工工程の設計及び管理に大いに貢献できるものと期待される。
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