Research Abstract |
本年度科学研究費補助金で購入した計算機を用いて,2つの回遊経路を持つ水産資源に対する漁業に関し,漁獲と資源特性との関係を理論的に解析した.本研究によって,漁場への加入量の変動のパターンが,回遊経路の決定メカニズムによって大きく影響されることが分かった.回遊経路が機会的な要因で決まっている場合には,一方の漁場での漁獲の上昇は他方の漁場への加入量を低下させるが,回遊経路が遺伝的に決定されている場合には,逆に他方の漁場の加入量は増大することが明らかになった.また後者の効果は,資源個体群における密度依存性の働き方によっては,漁獲の変化が一時的なものであっても長期的な効果を持ち,資源水準がなかなか元のレベルに回復しない場合があることも分かった.さらに,2つの漁場での漁獲が,それぞれの利益を高めることを目指している場合と,双方の利益の総和を高めることを目指している場合では,最終的に達成される漁獲が異なることも明らかになった.特に,回遊経路が遺伝的に決定されている状況では,双方の漁業が総漁獲高を高めるように協力的に振る舞うことで,漁獲を非常に高めることができることが分かった. これらの成果は,1995年度水産海洋学会研究発表大会と,1995年度日本水産学会春季大会においても発表された.
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