Research Abstract |
Duchenne型またはBecker型筋ジストロフィー(DMD,BMD)と診断された患者90例についてサザンブロット法を行い,70例にジストロフィン遺伝子の部分欠失や部分重複が検出された.このような異常が検出されなかった15例については,点変異などの微細なDNAの異常があると考え,Heteroduplex法に用いる対象となると考えた.その内の1名について,末梢血単核球(PBMC)から当研究室で開発されたRNA抽出法を用いてRNAを抽出し,逆転写反応後,PCR法を行いジストロフィンcDNAを合成した.同様に正常人からジストロフィンcDNAを合成し,両者を混合後,高温による変性を行い,徐々に温度を下げることによりheterodupulexを形成させ,電気泳動による点変異の検出を行った.しかし,この方法では点変異を検出することができなかった.そこで,点変異の検出方法を変更し,塩基配列決定を用いることにした.ジストロフィンcDNAはNested PCR法を用いて増幅した.1回目のPCR反応は,ジストロフィンcDNA14kbを10領域に分けて行い,2回目のPCR反応は,1回目の産物をさらに2〜3断片に分けて増幅し,塩基配列を決定した.その結果,7ヶ所で点変異が検出された.その位置は塩基番号で,4614番目のTがAに変異し(Len→Gln),5442番目のGがAに(Arg→His),5738番目のAがCに(変異なし),7304番目のCがAに(Gln→Lys),8937番目のAがTに(GLU→Val),8942番目のAがG(Asn→Asp),9458番目のGは欠失していた.最後の欠失によるフレームシフト変異は,その38ヌクレチド下流に終始コドンを生じさせていた.従って,このフレームシフトが対象者でのDMD発症の原因と考えられた.今後,残りの14例について塩基配列を決定し,DMD/BMD患者の遺伝的背景を解析したい.
|