Research Abstract |
愛媛県の大腿骨頸部骨折の現状を把握するため,1992年1年間に愛媛県内で発生した大腿骨頸部骨折患者について医療機関調査を行い,880例の患者を把握した.また医療機関調査で把握した患者について患者アンケート調査を実施した.人口10万対の発生率は男性が29.2,女性が84.0で,女性が男性の約3倍であり,また女性では男性より内側骨折の占める比率が大きかった.年齢階級別にみると男女とも65歳以上で著しく上昇し,女性の85歳以上では1,000以上に達した.骨折の受症機転は65歳以上で「立った状態からの転倒」が多く,今後高齢者の転倒および身体的跪弱性について調査を深める必要がある.退院時の身体活動状況では,特に骨接合術を行った患者では年齢とともに歩行可能者の割合が著しく減少した.退院から約1年後には8割以上が歩行可能であったが,約2年後には歩行可能者の割合は7割弱に減少した.退院約2年後の時点において生存していた患者と死亡していた患者を比較すると,骨折時の年齢は死亡例の方が生存例より高く,多重ロジスティック・モデルを用いて生命予後の解析を行うと,女性の方が生命予後は良好であった.次に同じ時点で,生存していた患者について,歩行可能な患者と歩行不能な患者を比較すると,歩行不能患者では歩行可能患者に比して有意に年齢が高かった.また受傷機転についてみると歩行不能な患者では歩行可能患者と比較して有意に転倒要因で受傷した者が多かった.多重ロジスティック・モデルを用いて歩行に関する予後の検討を行うと,有意な関連がみられたのは骨折発症時の年齢であり,年齢が高いほど歩行状態は悪化していた.
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