Research Abstract |
同じ大酒家であっても、大酒家すべてが高尿酸血症をきたすことはなく、常習飲酒者の約20-30%に認められるに過ぎない。近年、ADH2およびALDH2遺伝子に多型が存在することが明らかにされ、これら遺伝子多型が飲酒行動に深く影響することが明らかにされている。そこで、1日3合、10年以上の飲酒歴を有する男性常習飲酒者86例の末梢血よりリンパ球を分離し、DNAを抽出、ADH2遺伝子多型(Xuらの方法),ALDH2遺伝子多型(Haradaらの方法)と高尿酸血症との関連について検討した。ADH2 genotypeの分布;ADH2^1/2^1,ADH2^1/2^2,ADH2^2/2^2は7.5mg/dl24例では、3例(12.5%),8例(33.3%),13例(54.2%)に対し、7.5mg/dl未満62例では、それぞれ26例(41.9%),15例(24.2%),21例(33.9%)であり、高尿酸血症例におけるADH2^2/2^2の出現頻度が有意に高率であった(p<0.05)。ADH2^2遺伝子頻度も尿酸7.5mg/dl以上例0.708に対して、7.5未満例では0.460であり、高尿酸血症例におけるADH2^2遺伝子頻度が有意に高率であった(p<0.01)。一方ALDH2遺伝子型には差を認めなかった。 エタノールはアルコール脱水素酵素(ADH)により代謝され、アセトアルデヒドとなるさいに、補酵素であるNADがNADHに変化し、肝におけるredox stateが還元型に偏位することが明らかにされている。この偏位を是正するために、ピルビン酸から乳酸への変換が促進し、高乳酸血症をきたし、増加した乳酸が尿酸の腎臓からの排泄障害をおこし、アルコールによる高尿酸血症が生じると考えられている。ADH2^2遺伝子はアルコール代謝能の高いADH蛋白をコードすることから、エタノール酸化能が高い遺伝子型であるADH2^2/2^2を有する飲酒家が高尿酸血症をこしやすいと考えられる。
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