Research Abstract |
エリストマイシンを代表とする14員環系マクロライド抗生物質は癌細胞の蛋白分解酵素産生を抑制することで、またcamostat mesilateは直接的に蛋白分解酵素を抑制することで両者は癌の浸潤・転移を抑制するという仮説のもとにin vitroの系において癌細胞の浸潤能をみるためにbasement membrane matrixでコーティングされたフィルターを用いたチャンバー(Matrigel^<TM> Invasion Chamber)を用いinvasion assayを行った。癌細胞として浸潤・転移性の強いHT-1080(線維肉腫細胞)、PA-1(卵巣奇形癌細胞)のcell lineを用いた。薬剤はマクロライド系抗生物質としてerythromycin(EM), roxithromycin (RXM), clarithromycin (CAM), azithromycin (AZM), josamycin (JM)を使用し、他にfosfomycin (FOM)とcamostat mesilate(CM)について検討を行った。 どの薬剤が浸潤抑制効果を示すかをみるために各抗生物質は0,10μg/ml、CMは300ng/mlの濃度で培養を行った後invasion assayを行った。その結果、それぞれの細胞においてEM, RXM, CAM, AZM, CMはその浸潤を抑制した。このうちEMはPA-1細胞の、RXMとCMではHT-1080細胞の浸潤を用量依存性に抑制する傾向が得られた。 以上、マクロライド系抗生物質のうち14員環系(EM, RXM, CAM)と15員環系(AZM)のものとCMに悪性腫瘍の浸潤抑制作用があることが示された。今後マクロライド系抗生物質とCMとの組み合わせで浸潤抑制作用が増強されるか。等につき検討した上でin vivo (動物実験)での確認作業へと移る方針である。
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