Research Abstract |
【目的】近年ryanodineと特異的に結合するCa^<2+>誘発性Ca^<2+>放出チャンネル(Ca^<2+>-induced Ca^<2+> release: CICR)の存在が注目されている。我々は既にryanodine特異的結合能が,重度脳虚血15分以降に海馬CAIにおいてのみ低下を示し,同部位のCICR動態に大きな擾乱が生じていることを示した^<1.2)>.一方FK506結合蛋白(FKBP)と結合し,CICRを調節することが明らかとなってきた^<3)>.またFK506の脳虚血保護作用が報告されFKBPの作用が注目されている^<4)>.そこで今回我々はFK506投与動物を用い,脳虚血時のCICR動態に対するFK506の効果について検討した. 【方法】砂ネズミ14匹を用い,FK506投与群(n=4)と非投与群(n=10)に分けた.FK506投与群では経静脈的にFK506(0.1mg/kg)投与15分後に右総頚動脈を結紮した.結紮2時間後に[^<14>C]iodoantipyrine法により局所脳血流量(LCBF)を測定した.同一脳の切片を用い,[^3H]ryanodine(15nM)でlabelingした.また非特異的結合量測定のため,上記に加え未標識ryanodine(15mM)を加えlabelingを行った.オートラジオグラムを作製し,[^3H]ryanidine総結合量から非特異的結合量を減じて特異的結合量とした^<2.5)>.FK506非投与群でも同様の実験を行い.両群とも結紮側虚血中心部の視床外側核LCBFが50ml/100g/分未満となった有意な虚血動物を対象とし定量的検討を行った. 【結果】脳内代表的ryanodine特異的結合量を表に示す.FK506投与群では非投与群に比し結紮側海馬CAl領域の特異的ryanodine結合量低下は認められなかった. 【考案】FK506前投与により,虚血側海馬CAlにおけるryanodine結合量低下が抑制された機序として,FK506がFKBPと複合体を作り,ryanodine受容体を開存させた結果である可能性.あるいはFK506の虚血保護作用より,ryanodine受容体傷害が抑制された可能性が考えられる.今後のさらなる検討が必要と考えられた. 【結語】海馬CAl領域での虚血時のCICR動態の変化に対しFKBPの関与が示唆された. 【文献】1)野崎博之,他:神経化学 33:256,1994 2)野崎博之,他:脳卒中 17:306,1995 3)Timerman AP, et al: J Biol Chem 268: 22992-22999, 1993 4)Sharkey J, et al: Nature, 371: 336, 1994 5)Padua RA, et al: Brain Res, 542: 135, 1991
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