Research Abstract |
ラット中大脳動脈閉塞モデルにて,c-fos,junB,junD,zif/268,nur77の即時性初期遺伝子と熱ショック蛋白に転写されるmRNA(hsp72 mRNA)の脳血流の閾値を[^<14>C]-iodoantipyrineを用いたオートラジオグラムにて測定した.c-fos,junB,junD,zif/268,nur77の即時性初期遺伝子の脳血流の閾値は,それぞれ30.5±2.9,27.0±3.8,28.4±2.8,27.8±2.8,25.4±3.4ml/100g/minであり,各mRNAに差異は認めなかった.また,熱ショック蛋白に転写されるmRNA(hsp72 mRNA)の脳血流の閾値は,24.5±3.6ml/100g/minであり,hsp72mRNAの脳血流の閾値も即時性初期遺伝子の脳血流の閾値と等しかった.次に,NMDA receptor阻害剤,MK-801の即時性初期遺伝子やhsp72 mRNAの発現に及ぼす効果と脳血流に及ぼす影響を検討した.MK-801の脳血流に及ぼす影響の検討では,対側半球の平均脳血流は,対照群で93±15ml/100g/min,MK-801投与群で187±38ml/100g/minとMK-801は有意に非虚血側の脳血流を増加させた.またそれぞれの脳血流の閾値以下のischemic volumeでは,MK-801はischemic volumeを約25%有意に縮小させた.一方,MK-801の即時性初期遺伝子やhsp72mRNAの発現に及ぼす効果については,MK-801は,remote cortexにおける即時性初期遺伝子やhsp72mRNAの発現を減少させた.またc-fos,junB,junD,zif/268,nur77の即時性初期遺伝子やhsp72mRNAの脳血流の閾値は,それぞれ26.1±3.5,26.5±4.1,26.9±4.8,28.6±6.2,24.5±5.2,25.5±5.5ml/100g/minであり,各mRNAに差異は認めなかった.この結果は,NMDA receptor阻害剤,MK-801は,脳血流や即時性初期遺伝子,hsp72mRNAの発現を変化させ,結果として脳虚血保護作用を示したと考えられたが,これらの遺伝子が発現できる脳血流の閾値には影響を及ぼしてなく,即時性初期遺伝子やhsp72mRNA発現を調節する因子は,脳血流と結びついたmetabolic parameterにあると推測された.
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