Research Abstract |
1.正常者5例を対象に,人工気象室内で20℃→40℃→20℃(湿度一定)と室温を変化させ,各々の条件下で,頸部磁気刺激によるSSRを記録した。手掌・足底部位では,いずれの室温下でも100%の出現率でSSRが記録され,潜時,振幅も特に変化しなかった。その他の部位では,20℃の室温下では,SSRの出現率が低く,40℃に上昇させると,SSRが100%の出現率で得られ,潜時も最短で,振幅も最大となったが,再び20℃へ下げるとSSRの出現率が急速に低下した。従って、手掌・足底部位とその他の部位で記録されるSSRは温熱刺激から受ける影響が全く異なることが明らかとなった。 2.通常の室温下(23-28℃)で,正常者23例を対象に8記録部位(上腕,前腕,手掌,上前腸骨棘,大腿,膝,下腿,足底)で頸部磁気刺激によるSSRを記録し,その潜時と身長との相関を検討したところ,すべての記録部位で有意に身長との相関がみられた。 3.発汗低下を訴える21症例(パーキンソン病,糖尿病性ニューロパチー,家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)など)で上記と同様の方法で,SSRを記録した。全例で少なくとも1記録部位以上の部位でSSRが誘発不能であった。特に,自立神経障害や発汗障害の強いFAP3例では,全ての部位でSSRが誘発不能であった。各記録部位でのSSR異常出現率は,上腕28.6%,前腕28.6%,手掌28.6%,上前腸骨棘47.6%,大腿66.7%,膝81.0%,腿90.5%,足底57.1%であった。潜時延長を示した部位は2例の2記録部位のみであり,SSRの潜時は異常検出にあまり有用でないと判断された。従来からのSSRの記録部位である手掌・足底ではSSRが誘発されるもそれ以外の部位でSSR誘発不能を示した症例が21例中9例(42.9%)も存在した。従って,発汗障害をより鋭敏にするためには多数部位でSSRを記録することが有用であると診断された。
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