Research Abstract |
インスリン抵抗性症候群または高インスリン血症は,動脈硬化発現の病態として注目され,冠動脈の機能的異常に密接に関係する.インスリン抵抗性症候群または高インスリン血症は,冠動脈血管の機能的異常であるSyndrome Xあるいは冠動脈攣縮性狭心症の病態に関与する.一方糖尿病では血管内皮依存性平滑筋弛緩反応が障害される.本研究は高インスリン血症,高血糖が冠動脈血管内皮細胞機能におよぼす作用について検討した.9週齢または14週齢のSTZ誘発糖尿病または対照SDラットの摘出潅流心で、冠灌流圧-流量関係を求め,冠静脈洞流出液より%oxygen extraction(%OE)を求めた.9週齢では糖尿病群と対照群で冠灌流圧-流量関係に差はなかった.インスリンは糖尿病群で圧-流量関係を上方に変移し,L-NAMEにより部分的に抑制された.また高グルコースは対照群で圧-流量関係を下方に変移した.14週齢では糖尿病群,対照群とも9週齢に比べ圧-流量関係は下方に変移し,高グルコースは両群でさらに下方に変移させた.糖尿病群では対照群に比べて冠灌流量-%OE関係が左下方に変移したがインスリンで回復した.以上より慢性の高血糖状態にある糖尿病ラットでは,好気的代謝障害にともなう血管内皮依存性血流調節が存在しインスリンで回復することが示唆された.正常血糖の対照群では,高グルコースによる血管内皮依存性血流調節が加齢による血中インスリン増加で増強することが示唆された.
|