Research Abstract |
先天性銅代謝異常症の代表的疾患であるWilson病の遺伝子診断法の確立を目的として,本症患者における原因遺伝子の構造解析を行った. 肝生検を施行し得たWilson病患者4例の肝組織よりRNAを抽出した.また,これらの症例を含む26例の末梢血よりgenomic DNAを抽出した.肝RNAよりRT-PCR法を用いて約270-950塩基対の大きさに11種類の断片を増幅した.これらのPCR産物を5%の非変性ポリアクリルアミド・ゲルに電気泳動し,サイズを正常コントロールと比較した.1例において,エクソン5を含む断片が正常より約160塩基対小さいバンドが描出された.この断片の塩基配列を決定したところ,エクソン5が完全に欠失していた.次に,genomic DNA上のどのような変異によりエクソン5のスキッピングが生じたかを検討するために,エクソン5を含む断片を本症例のgenomic DNAより増幅し,その塩基配列を決定した.その結果,イントロン4とエクソン5との境界部位より5塩基対上流(スプライシング・アクセプターサイト)におけるTからGへの点突然変異が認められ,この変化によりエクソン5が欠失したと考えられた.他の症例中2例においては,4番目の膜透過部位上に,GからTへの点突然変異が認められ,その結果,779番目のアルギニンがロイシンに変化していた.また,この変化により,この部位の制限酵素Hap IIの認識部位が消失した.これを利用し,この領域を含むエクソン8をPCRにて増幅し,Hap IIにて切断,8%ポリアクリルアミド・ゲルに電気泳動しそのサイズを検討することでこの変異を極めて簡便に検出できることを見出した.この方法を用いて,26症例(52 alleles)のエクソン8を解析した結果,約26%のallelesにこの変異が認められ,本邦患者において比較的頻度の高い異常であることが示唆された.また,本法により,1/4以上の患者の遺伝子診断が可能であると考えられた.
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