Research Abstract |
腫瘍の各種ストレス(放射線照射,温熱療法)後の高エネルギー燐酸代謝と細胞障害,特にアポトーシスとの関係を明らかにするため,マウス移植腫瘍を用い研究を行った.FM3Aマウス乳癌株,EL4マウスリンパ腫株の2腫の細胞をマウス皮下に移植し,7日後に治療および^<31>P-MRSの経時的測定を開始した.測定はOxford Instruments Limited社製のGSX270(静磁場強度6.34T)を用いた.測定されたスペクトルのピーク面積を算出しβ-ATP/Piの変化を観察した.FM3A細胞では照射後明らかなアポトシース細胞の出現は認められなかったが,スペクトルと腫瘍径との間に相関が認められた.すなわち照射後,腫瘍の縮小とともにβ-ATP/Piは高値を示し,腫瘍の再増殖よりも早く低下していった.EL4細胞では治療後明らかなアポトーシス細胞の出現が認められた.組織学的なアポトーシス細胞の頻度は放射線照射後4時間がもっとも多く,以後時間の経過とともに減少していった.照射後4時間のアポトーシス細胞の頻度は線量に依存しており,30Gy : 45%, 10Gy : 35%, 3Gy : 20%であった.照射4時間後では線量の多い場合にはアポトーシス細胞の腫瘍組織内からの排除が遅延した.β-ATP/Piは線量が多い場合に4時間後で一時低下し,その後時間の経過とともに照射前よりも高いレベルまで回復した.β-ATP/Piの照射後の回復は線量が少ないほど良好であった.温熱療法後ではアポトーシス細胞は照射よりも長期に腫瘍組織内に残存し,β-ATP/Piも長く低値をしめす傾向があった. ^<31>P-MRSによる腫瘍のβ-ATP/Piの変化により放射線誘発アポトーシス細胞の出現を推察することは困難と考えられたが,ストレス後のβ-ATP/Piの回復は,腫瘍内の血流低下や低酸素状態からの回復と相関すると推察された.
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