Research Abstract |
1.目的 高血圧ラット(SHR)の脳に認められる白質内浮腫について、脱髄を引き起こしていない早期の浮腫と脱髄を引き起こしている慢性期の浮腫との鑑別が磁気共鳴画像(MRI)で可能かどうかを調べた。 2.方法 12週,15‐25週(毎週),28週の雄の脳のSHRのMRIを撮像し、12,16,18,20,22,24週については屠殺し脳病理標本を作成した。MRIは、T1強調画像、T2強調画像、拡散画像を各々撮像した。病理標本はヘマトキシリン・エオジン染色と髄鞘の様態を観察するためにクリュバ-・バレラ染色を行った。コントロールとして12,16,20,24,28週の雄のWistar Kyotoラットの同様のMRIを撮像し、脳病理標本を作成した。MRIと脳病理標本を比較し、浮腫の程度、脱髄の程度がどのように画像に反映されるかを検討した。 3.結果 浮腫の範囲はT2強調画像で高信号強度に明瞭に描出可能であったが、脱髄の有無はまったく評価不可能であった。T2強調画像で高信号強度を示す浮腫が存在する場合でも、髄鞘が保たれている場合は拡散画像でその部分に信号の低下が認められた。この拡散画像での信号低下が、脱髄が強い部分では一部不明瞭になる場合があった。 4.結論 MRIの拡散強調画像は、高血圧脳症に認められる慢性浮腫において、脱髄の有無を検知することにより病変の進行度を評価でき、慢性高血圧脳症の病期診断に寄与する可能性が示唆された。 5.今後の課題 MRIの拡散強調画像での信号低下、脳病理標本での脱髄変化を各々スコア化し、より客観的な比較を可能にする評価方法を検討中である。
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