Research Abstract |
【目的】日本人の肝癌は肝炎,肝硬変を母地として発生する事が多い.肝癌の放射療法をより安全に行うために実験的にラットをもちいて,障害肝の耐容線量について検討した. 【対象と方法】Wister系の4週齢雄性ラットにdimethylamino-azobenzene (DAB)を配合した低蛋白飼料を12週間投与して肝炎,肝硬変を作成し,障害肝群とした。一方、普通食で飼育した同週齢のラットを正常肝群とした。ラットの右半肝に15MeVの電子線を使用して,まず2匹ずつにそれぞれ5Gy, 10Gy, 15Gy,照射し,2週間後,4週間後に屠殺して照射肝部および非照射肝部の肝細胞壊死の程度,肝細胞変性の程度、グリソン鞘の炎症細胞浸潤及び線維化の程度を組織学的に比較検討した。ついで障害肝群ラット4匹ずつにそれぞれ10Gy, 12Gy, 15Gy, 20Gy照射し,同様の検討を行った。 【結果】1)正常肝群 5Gy, 10Gy, 15Gy照射群では照射肝部と非照射肝部との間に明らかな変化の差を認めなかった。2)障害肝群 5Gy, 10Gy照射群では照射肝部と非照射肝部との間に明らかな差を認めなかった。12Gy照射群では照射2週間後と4週間後それぞれ2例中1例に照射肝部のほうにやや強い変化がみられた。15Gy照射群では照射2週間後では3例とも照射肝部と非照射肝部との間に明らかな変化の差を認めなかったが,照射4週間後では3例中1例に照射肝部のほうに強い変化がみられた。20Gy照射群では4匹中2匹が照射後1週間目に死亡した。生存例では照射肝部と非照射肝部との間に明らかな変化の差を認めなかったが,照射肝部に癌細胞を認めた。 【結論】障害肝において、半肝1回照射では10Gyまでは耐容と考えられる。12Gy以上では不可逆変化が残る例があり、20Gyでは致死例を認めた。正常肝では15Gyでも耐容であり、障害肝は正常肝よりも耐容線量が低いことが証明された。
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