Research Abstract |
原発性肺癌のN因子の診断をより正確に行うために縦隔リンパ節転移診断につきCT, MRI,病理像を比較して検討した。 現在CTにおける診断基準は主にリンパ節の大きさに依っており,全ての部位において,リンパ節の短径が10mm以上を転移陽性とする報告が多い。リンパ節の生体内での大きさを知るために206例の原発性肺癌より摘出されたリンパ節3855個の径を測定したところ部位別にリンパ節径には違いがあり,最大標準のものは#7で,短径は10mmより大きかった。従って,大きさではこの領域の基準を大きく設定する必要があると考えられた。 リンパ節の内部性状から転移診断を行うためにSTIR法における転移,非転移リンパ節の信号強度や病理像との比較を行った。転移リンパ節では有意にSTIR像の信号強度が強かったが,非転移リンパ節(特に炭粉沈着,珪肺結節,結核結節や石灰化を含むもの)ではこの信号が低下し,転移陰性と判定する根拠になると考えられた。そこで,術前2週間以内にCT, MRIが施行された原発性肺癌167例を対象にこれまでの知見を加えた新しい転移診断基準(CTではリンパ節の短絡,MRIではリンパ節の短絡と内部の信号強度を基準とする)を作成し,CT,通常のMRI, STIR併用MRIに分け縦隔リンパ節転移診断を検討した結果,sensitivityはそれぞれ75%,67%,75%,specificityはそれぞれ82%,85%,92%,accuracyはそれぞれ80%,80%,87%でSTIR併用MRIが最も優れていた。しかし,MRIを全例に行うことは無理があり,その役割としては,第一選択として施行されるCTで,腫大があり転移陽性とされたリンパ節のうち,内部が不均一に信号が低下するものを除外し,CT診断のfalse positive例を減少させ得ることにあると思われた。
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