Research Abstract |
本研究では,女子神経症者を対象として,森田療法絶対臥褥期における体温リズムの推移を検討した. 対象は,浜松医科大学精神科病棟で入院森田療法を施行した女子神経症者8名(19〜29歳,平均年齢23.3歳:不安神経症者4名,強迫神経症者4名)と女子健常者5名(19〜21歳,平均年齢19.6歳)である.対象に研究の目的と方法を充分に説明し,同意を得て検査を施行した.生体リズムの指標として,体温リズムと睡眠・覚醒リズムを測定し,今回は体温リズムの結果を検討の対象とした.測定時の月経周期は基礎体温から決定し,健常者では全例卵肪期に,神経症者のうち不安神経症の2例では黄体期に,他の6例では卵肪期に測定を施行した.健常者では3日間,神経症者では絶対臥褥期間中それぞれ直腸温を連続測定して,直腸温が最低値(nadir)を示す時刻を視察法およびコサイナ-法により判定した. 健常者におけるnadir出現時刻の平均は,第1夜が5:15,第2夜が3:57,第3夜が5:15で,3夜を通して著名な変動を認めなかった.不安神経症者4例におけるnadir出現時刻の平均は,第1日から2:20,0:30,1:25,2:20,0:45,2:50,3:15であり,臥褥期間を通して位相の変動と前進を認めたが,第6日,第7日では徐々に後退し,生体リズムの調節が始まる時期と考えられた.強迫神経症者4例のnadir出現時刻の平均は,第1日から3:08,4:04,3:23,3:30,3:00,4:00,4:38であり,不安神経症者と比較した場合,位相の前進,臥褥中の変動とも著明ではなかった.また,第6日,第7日では健常者と同様の結果示したことから,絶対臥褥期が生体リズムの調整に有効であったと思われた.以上の結果から森田療法における絶対臥褥期は,神経症者の生体リズムを調節する効果を有すると考えられた.
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