Research Abstract |
大動脈硬化度(脈波伝導速度,PWV)の測定と血液採取の完了している症例数は、現時点で、慢性腎不全血液透析患者で257名、健常対照群で242名。このうち、明らかな糖尿病患者、高脂血症治療薬内服者などを除外したところ、透析患者185名(平均年齢55歳)、健常対照群201名(平均年齢52歳)となった。動脈硬化の指標のPWVは年齢とともに高値となった(r=0.446,P=0.0001)。年代別のPWV値を2群間で比較すると、どの年代においても透析患者で対照群より高値であり、透析患者では大動脈硬化が高度であることが示された。血清脂質、リポ蛋白レベル(Mean±SD,mg/dL)の比較では、健常群vs.透析患者群で、血清総コレステロール(TC)205±28vs.167±38,トリグリセライド(TG)99±56vs.115±55,VLDL-Chol35±12vs.33±14,IDL-Chol6.9±4.4vs.15.0±7.8,LDL-Chol107±22vs.80±23,,HDL-Chol54.8±14.2vs.39.4±10.0であり、透析患者でTG,IDL-Cの増加、TC,LDL-C,HDL-Cの低下が認められ、特にIDLレベルが健常群の2倍以上に増加していることに注目された。Lp(a)は21.5±12.9vs.22.0±14.5mg/dLであり、今回の対象では透析患者で高値とはいえなかった。PWV値に影響を与える寄与因子を重回帰分析で検討したところ、全体での検討では、年齢、血圧、NonHDL-cholが正の、HDL-Cが負の関連を示した。透析患者のみでの検討では、年齢、血圧、NonHDL-cholが正の関与を示し、NonHDL分画(VLDL,IDL,LDL)の中でも特にIDL分画の関与が有意であった。なお、Lp(a)とPWVとの関連は認められなかった。酸化LDL自己抗体価の測定については、測定系の確立に問題があり、この報告書には盛り込めなかったが、引き続き継続の予定である。
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