Research Abstract |
目的:透析療法を受けている慢性腎不全患者が増加の一途をたどり,中でも腎性骨異栄養症は患者の社会復帰を妨げる重大な問題となっている中で,血液透析施行中の慢性腎不全患者の骨代謝異常に対する増殖因子・サイトカインの影響について検討する.対象:慢性糸球体腎炎を原疾患とする血液透析患者をintact-PTH300pg/m以上と以下の2群に分類し,それぞれ10名ずつを対象とする.方法:血清中intact-PTH(RIA法),1α,25-(OH)_2D_3(RRA法),Al-P(PNP基質法),オステオカルシン(RIA法),酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(RIA法),エストロゲン(E1,E2,E3)(RIA法)を測定する.また血液透析前後の血清中およびアセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸を含む)で血液透析膜(PMMA膜)より抽出した吸着物質中のIL-1β,IL-6,TNF-α,TGF-β,IGF-IをELISA法にて測定する.結果:(1)2群いずれも1α,25-(OH)_2D_3は低値であった.(2)intact-PTH高値群で血清中Al-P,オステオカルシン,酒石酸抵抗性酸フォスフォターゼが高い傾向を示した.(3)血清中IL-1β,IL-6,TNF-α,TGF-β,IGF-Iはいずれの患者でも検出されなかった.(4)血液透析膜吸着物質中IL-1β,IL-6,TNF-α,TGF-βはintact-PTH高値群において高い傾向であった.考察:intact-PTHが高い群ではAl-P,オステオカルシン,酒石酸抵抗性酸フォスフォターゼも高いことから,骨形成および骨吸収がともに亢進していると考えられた.一方intact-PTH低値群ではAl-P,オステオカルシン,酒石酸抵抗性酸フォスファターゼいずれも低く,骨形成,骨吸収ともに抑制された低回転性骨であると考えられた.血清中IL-1β,IL-6,TNF-α,TGF-β,IGF-Iはいずれの患者でも検出されず,血清中には微量しか存在しないと考えられた.しかしこれらが,透析膜吸着物質中では骨形成および骨吸収がともに亢進していると考えられるintact-PTH高値群において高い傾向を示したことから,IL-1β,IL-6,TNF-α,TGF-β,IGF-Iは血液透析施行中の慢性腎不全患者の骨形成および骨吸収に関与していることが示唆された.
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