Research Abstract |
腎尿細管における活性酸素の直接作用を調べる目的で、単離尿細管微小灌流法を用いて兎皮質部集合尿細管(CCD)における過酸化水素(H2O2)の作用を調べた。まずH2O2をCCDの基底膜側より作用させると、管腔内外側間電位差(Vt)は脱分極を示し、この変化は濃度依存性を示した(basal;-12.0±1.9mV,10^<-12>M;-12.0±1.9mV,10^<-10>M;-10.5±2.9mV,10^<-8>M;-9.6±3.0mV,10^<-6>M;-8.8±2.7mV)。しかし、このVt変化は基底膜側の灌流液よりH2O2を除去しても回復せず不可逆的であり、さらに10^<-4>M以上では光学顕微鏡下においても細胞の障害は明らかとなり一部細胞の剥離、脱落を認め、このような状態ではVtは0mVになった。またH2O2をCCDの管腔側より作用させると、基底膜側同様Vtは脱分極を示し、結果は同様であった(basal;-11.3±2.6mV,10^<-6>M;-4.7±3.6mV)。次に作用機序を検討するため、これまでの報告よりサイクロオキシゲナーゼ代謝物の関与が示唆されたためインドメタシン(IND)を前処置した後同様の実験を行った。INDはH2O2による脱分極を抑制しなかった(basal;-11.0±3.1mV,10^<-6>M;-6.3±3.3mV)。また、酸塩基平衡が活性酸素の作用に影響するとの報告があるため、H2O2の反応をpH7.4及びpH6.8の灌流液にて検討したところ両者とも同様に脱分極を示し、明らかな差は認められなかった。これまでのまとめとして、1)H2O2の脱分極作用は基底膜側及び管腔側の両側で認められ、この変化は不可逆的である。2)10^<-4>M以上では細胞障害が顕著である。3)この脱分極変化はINDの前処置では抑制されず、アシドーシスによる影響は受けない。
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