Research Abstract |
【目的と方法】本研究では,雑種成犬を用いて,腹腔鏡下に安全かつ迅速に迷走神経切離術を行うための手技開発をおこなった.その際,開腹手術で行われていたHill法迷走神経切離術(後幹切離+前技選択的近位迷切)を腹腔鏡下に行った.後幹切離が,胃および胆嚢運動機能に及ぼす影響に関する検討も併せて行った. 【結果】手技開発の段階で大きな問題となったのは,雑種成犬では,後幹を切離するとき,高率に右胸腔にて開胸し,気胸となることであった.前枝の切離時に行う,胃流入血管の切離には超音波メス(55,500Hz:鋏状)が有用であった.この使用により,止血クリップが不要となったため,血管剥離の距離が短くて済み,結果的に,出血量の減少と,手術時間の大幅な短縮(平均118分から平均63分に短縮)をもたらした.アセトアミノフェンによる胃排泄能の測定は,経口投与法に問題があり,有意義なデータが得られなかった.このため,胃内視鏡検査により残渣量を6例に測定したが,6例中4例のイヌにおいて,中等度〜多量の残渣が観察された.経時的には術後約4週間で,全てのイヌで残渣の消失を認めた.胃排泄能障害は,一過性のものであることが示唆された.超音波検査法による胆嚢径の測定は,イヌでは胸腔が胆嚢の上に被さる影響で,良好なデータは得られなかった.かろうじて経時的変化を観察できた1例では,術後1週目にセオスニンによる胆嚢収縮は認められなかった.4週目でも胆嚢収縮は微弱であったが,3ヶ月後には術前の収縮率の50%程度に復帰していた.正確な運動機能評価には,測定法の改良が必要である.
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