Research Abstract |
大腸癌の浸潤・転移には宿主側の局所免疫の破綻が関与していると推測されている。また,消化管における神経内分泌系は消化管免疫に大きな影響を与えている。特に消化管に豊富に存在する神経ペプチドにおいては,vasoactive intestinal peptide (VIP)が免疫抑制的に作用することが知られている。一方,大腸癌に隣接する正常粘膜である移行部粘膜においては粘液組成の異常が報告されており,VIPとの関連が示唆される。そこで,今回我々は大腸癌18症例の移行部粘膜と正常粘膜でのVIP含有神経繊維に免疫染色を施行し,NIH-imageを使って神経繊維密度を定量的に解析し,癌の組織学的所見との関連性を検討した。 [方法] 1.大腸癌切除標本の癌部非癌部の移行部粘膜および癌から離れた正常粘膜から新鮮標本を採取し,ホ-ランド液で固定,パラフィンブロックを作製し,これらのブロックから連続切片を切り出し抗VIP抗体による免疫染色を行った。2. VIP含有神経繊維について,その神経繊維長・密度をパーソナルコンピューターの画像解析ソフト(NIH-image)を用いて定量的に解析した。3.以上の解析結果と,切除癌の部位,浸逹度,リンパ管侵襲,リンパ節転移,stage等の臨床病理学的諸因子との関連を検討した。 [結果] 1. VIP含有神経繊維は左側大腸粘膜に多く存在する傾向が見られた。 2. VIP含有神経繊維の量を移行部と正常部とで比にしてみると,stageが進むほど,また深逹度が深いほど正常部に対する移行部のVIPの割合が多くなる傾向が見られた。 [考察] VIPは免疫抑制的に働くことが知られており,進行した癌の移行部でVIPが多かった結果から,VIPが局所免疫を抑制し癌細胞の増殖に有利な環境を形成している可能性があると考えられる。今後,症例を増やして,研究を続行していく予定である。
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