Research Abstract |
ストレッチやアイシングなどのコンディショニングの方法や効果を分かりやすくスポーツ現場の指導者や選手に指導することによって,スポーツ障害の予防・治療に寄与することを目的として,疲労課題に対するコンディショニングの効果を定量的に解析した.対象は,スポーツ習慣のない健常女性18名とし,安静群(R群),アイシング群(I群),ストレッチ群(S群)の3群に6名ずつ無作為に振り分けた.年齢は18〜24才(平均20.3)であった.方法は,疲労課題(1)→10分間の安静またはアイシングまたはストレッチ→疲労課題(2)とし,コンディショニングの有無や方法の違いによる主観的疲労度,等尺性膝最大伸展筋力,大腿直筋の表面筋電図,大腿前面の表在温及び深部温をそれぞれ比較した.疲労課題は(1),(2)ともに5秒間の最大伸展と5秒間の休憩を20試行行わせた.主観的疲労度は疲労課題(1)の直後と10分間の安静またはコンディショニング直後にvisual analogue scale法を用いて検査した.筋張力と表面筋電図のデータは,コンピュータにて信号処理を実施した.表在温はサーミスタ温度計,深部温は深部温モニターを用いてそれぞれ1分毎に計測した.その結果,課題(1)終了から10分後の主観的疲労度は,S群が最も低く,以下I群,R群の順であった.また,その時点での表在温は,I群,R群,S群の順に低く,深部温は,S群が最も高く,以下I群,R群の順であった.課題(2)における1試行目と20試行目の筋張力低下率は,S群が最も低く,以下I群,R群の順であった.課題(2)における筋電図積分値の低下率はI群が最も低く以下S群,R群の順であった.以上より,主観的疲労や筋張力の回復に対してはストレッチ,アイシングが安静よりも効果的であることが示唆された.これらの結果は平成8年2月に東京にて開かれた(財)日本水泳連盟公認コーチ研修会,松本市で開かれた松本市スポーツ少年団研修会にてそれぞれ発表した.
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