Research Abstract |
【臨床研究1】低血圧麻酔が肝血流量および肝機能に及ぼす影響をGSTを用いて評価した。腰椎手術を受ける患者5名を対象とした。亜酸化窒素-酸素-イソフルランで麻酔を行い,トリメタファンを用いて平均血圧を50〜55mmHgに維持した。手術開始時,低血圧麻酔終了時,手術終了1,2,3,4,6時間後に採血してGSTを測定した。GSTは酵素免疫測定法のキットを用いて測定した。その結果,術前の肝機能が正常であった4名では,低血圧麻酔後にGST変化は認められなかった。しかし,アルコール性肝炎の既往があり,術前のAST,ALTが軽度上昇していた1名では,低血圧麻酔後にGSTの上昇が認められた。現在,症例を増やすために研究を継続中である。 【臨床研究2】肝血流遮断後のGSTの変動を追跡し,現在使用されているAST,ALTと比較した。肝切除術を受ける患者で術中に完全肝血流遮断を行う7名を対象とした。胸部硬膜外麻酔併用の亜酸化窒素-酸素-イソフルランで麻酔を行い,低用量のドパミンを持続投与した。手術開始時,遮断解除直後,解除2,4,6時間後に採血してGSTを測定した。AST,ALTは術直後,術後1,2,3日目に測定した。その結果,遮断解除直後GSTは全例増加し,その後徐々に減少することが明らかになった。直後に高値を示した2名では6時間後に再びGSTが増加し,AST,ALTが術後1日目に高値を示した。血流遮断時間とGST,AST,ALTは相関しなかった。GSTは,ほかの酵素に比べて,肝血流遮断による肝細胞障害に迅速に反応すると考えられた。この結果については,第43回日本麻酔学会総会(平成8年3月)で発表予定である(J.Anesth.,10(Suppl.),A227,1996)。
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