Research Abstract |
前房隅角から線維柱帯を通り,シュレム管から眼球外へ至る眼房水の流出経路が障害されることにより緑内障は発生する.特に,臨床的に多く見られる開放隅角緑内障では、何らかの原因により線維柱帯を房水が通過しにくくなると考えられる.誘電分散法を用いて,線維柱帯の微細構造の変化を非侵襲的に捉え,房水排出機能を定量的に評価することを目標とし,白色家兎の前眼部のインピーダンス測定を行った.測定はin vivoに適しているYHP社インピーダンス・アナライザ4194Aにより,同心円状表面電極を用いて10kHzから100MHzの周波数域にわたり行った.線維柱帯の微細構造を捉えるため,電極のサイズは可及的小さくする必要があり,今回,直径0.9mmの針型表面電極を試作した. 白色家兎の角膜輪部より約0.5mm角膜側を,同電極で誘電測定後,房水を空気に置換した後,同一部位の測定を行うと,明らかに前房中の空気の影響により導電率が低下した.同電極は,強角膜境界部付近で強角膜全層から,さらに前房に至る深部にまで,即ち線維柱帯の誘電測定が可能であった.続いて,正常眼球を用いて,電極を角膜輪部付近を約0.5mm間隔で,角膜側から強膜側へと連続測定した.その結果,角膜輪部から約0.5mm強膜側へ入った部位で,誘電分散現象のブロードニングが顕著となり,測定データをloss tangent表示した場合のピーク値の低下を認めた.この部位でのloss tangentの低下は,角膜・輪部・結膜上皮を剥離後に,同様の測定を行った場合にも認められ,線維柱帯の複雑な微細構造を反映し,角膜輪部から約0.5mm強膜側へ入った部位の直下での線維柱帯の存在を示唆した. 以上のように,本法を用いて,非侵襲的に線維柱帯の房水排出機能の定量的評価を行い得る可能性が示された.今後は,実験的緑内障を作成し,それに伴う線維柱帯の誘電挙動の変化を追跡する予定である.
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