Research Abstract |
種々のぶどう膜炎とYersinia enterocolitica由来の熱ショック蛋白(分子量60kD:以下YeHSP)が関連するか検討した。その結果YeHSPに対し患者群13例は正常群10例に比較して有意な抗体価の上昇をELISA法にて認め、さらにウエスタンブロッテイング法にて患者血清から有意にYeHSPに対する抗体が検出された。またYeHSP、ウシ、ヒト網膜抽出液を同時に泳動し血清との反応を観察したところ、患者群では10例中全例が(正常群10例中2例)これらの抗原と60Kdのところで反応した。従ってぶどう膜炎患者血清中に網膜の60Kd抗原と反応する抗体があり、それはYeHSPにも反応する。このことから網膜とYeHSPとの間には共通抗原のあることが分かった。また網膜切片と患者血清を反応させ、蛍光抗体法で観察すると陽性反応がみられる事が従来から報告されており、ウエスタンブロッテイング法にて認められた抗体は一種の自己抗体ではないかと考えられた。以上の得られた結果をOphthalmic Research誌、Karger出版(スイス)に報告すべく現在投稿中である。 ところで正常網膜にもHSP60が存在することが分かり、ウシ網膜100眼(90.3g)より約3.3mg採取できた。その性状は比色法にてレチノールとの結合を示さず、等電点電気泳動では約5.0であった。またアミノ酸組成はGly, Ala, GlX, Thrの順に60、11、6、5%であった。この網膜に由来する60kDのHSPを用いて、患者との関連性を検討したので、その結果は第100回日本眼科学会総会にて発表する予定である。 しかし正常網膜よりHSPは約0.004%しか得られないため収率は低く、充分な症例数の検討には常に不足する。そこで現在網膜芽細胞腫cell lineにストレスを与え、高率にHSPを採取する事に成功した。正常網膜由来のHSPとのこのHSPの相同性を確認したうえで、疾患との関連性や動物におけるぶどう膜炎惹起能を検討している。更にこのHSPと網膜芽細胞腫の抗原性の関係についても検討中である。
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