Research Abstract |
目的:黄斑部網膜下血腫は、脈絡膜からの網膜下新生血管が破綻して,網膜下腔に大出血を起こし血腫が形成されたものであり,その結果黄斑部の著しい視機能障害を来たす。原因疾患としては加齢性黄斑変性症や網膜細動脈瘤等があげられる。この疾患の治療法としてはDiode laserによる新生血管の凝固やインターフェロンを用いた新生血管の発生抑制が試みられているが未だ充分な成果が得られていない。大量の網膜下血腫の自然吸収は困難であり,黄斑部機能は著しく低下する。そのため早急な観血的治療が必要となる。近年,組織プラスミノーゲンアクチベータ-(t-PA)を用いた網膜下血腫除去の有用性が報告されている。私共は黄斑部網膜下血腫を来たした症例に硝子体手術を施行,t-PAを注入し血腫の溶解,除去を行ったので報告する。 対象:黄斑部網膜下血腫を来たした7例7眼(加齢性黄斑変性症6例6眼,網膜細動脈瘤1例1眼)。 方法:1)3port systemで硝子体切除,後部硝子体剥離を施行。 2)中心窩から離れた血腫の辺縁の網膜に意図的裂孔を作成する。 3)25μg/0.1mlのt-PAを裂孔より0.05〜0.2ml注入し,血腫溶解まで約20分放置する。 4)意図的裂孔部よりバックフラッシュニードルで溶解した出血を除去する。 1例1眼は出血除去の際パ-フルオロデカリンを使用した。 5)その後空気灌流,眼内光凝固,SF6ガス注入施行し手術を終了する。 結果:術後観察期間は1ヵ月から1年。視力改善は7眼中6眼。うち0.1以上の視力を得られた症例は5眼であった。また術前と術後に視野が測定できた症例では術後視野の改善を認めた。術後の合併症は一過性の眼圧上昇が4眼。網膜裂孔形成または網膜剥離が2眼。 うち1眼は再手術によって網膜復位した。また網膜下再出血は1眼に見られたが,経過観察中に自然吸収された。 結語:t-PA注入による黄斑部網膜下血腫の観血的除去は視機能改善に有効である。
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