Project/Area Number |
07771606
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Morphological basic dentistry
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
糸田川 徳則 大阪大学, 歯学部, 助手 (70232494)
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Project Period (FY) |
1995
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1995)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 辺縁性歯周炎 / 神経ペプタイド / 歯肉 / ラット / Substance P(SP) / Calcitenin Gene-Related Peptide(CGRP) |
Research Abstract |
緒言 辺縁性歯周炎の進展に様々な因子の関与することが判ってきている。歯肉溝に侵入した細菌に対して、宿主側には免疫担当細胞あるいは抗体-補体系が相互に関係しあって炎症反応が生じ、接合上皮の透過性の亢進、破骨細胞の活性化やcollagenの貪食能を持つ変性線維芽細胞の出現などが継発して、病変の確立することが概要として理解されているが、その機序については不明な点が多い。他方、近年になって知覚神経の一部は、神経ペプタイドを介して局所の炎症反応を制御しているのではないかと考えられている。そこで、本研究では、動物に実験的に辺縁性歯周炎を生じさせ各種ペプタイドを含有する神経の関与を調べることを目的とした。 実験の方法: 1.歯周炎の発症:Wistar系ラット(雄性、体重200g前後)を用いた。全身麻酔下にある実験動物の上顎臼歯の口蓋側歯肉に、Escherichia coli由来のLipopolysaccharide(LPS)を生理食塩水で希釈して1時間貼付した。 2.試料の作成:歯周炎の進展を追うために、LPS塗布後1、3、7日目に動物を灌流固定した。この後、下顎骨及び上顎骨を一塊として採取し後固定したのち、4-5日間の塩酸-蟻酸による急速脱灰を行なった。こうして得られた試料をsucrose-PBSで充分に洗浄した後、cryostatにて30-40μmの凍結切片を作成した。 3.試料の観察:i)免疫染色;上記の操作で得られた切片について、Substance P(SP)、Calcitonin Gene-Related Peptide(CGRP)、Protein Gene Product 9.5(PGP9.5)、Neurofilament Protein(NFP)及びGalaninの局在を調べるためSternbergerのPAP法に準じて免疫染色を施し検索を行なった。ii)対比染色;i)と並行して一部の切片に通常のH.E.染色を施し、歯周炎の進展程度を確認した。 結果と今後の展望: 本実験により次のことが判った。1)LPSを塗布して後1日では、歯肉上皮(口腔上皮)の潰瘍並びに広範な歯肉の炎症がみられた。SP、CGRP、PGP9.5、NFPなど知覚性神経に特有の神経ペプタイドを含有する線維は、炎症の著しい歯肉溝近くでは殆ど観察されなかった。他方、歯根膜及び口蓋側から伸びてきている比較的太い神経束では、数多くの数珠状の修飾を伴った変性が認められた。2)術後3日では歯肉溝近くに炎症は残存するが、歯肉上皮は再生していた。歯槽骨の吸収像はあまり見られなかった。歯肉溝上皮に分布する神経線維は認められるものの数は少なかった。歯根膜や口蓋側の比較的細い神経束では発芽が見られ、少ないながら、歯肉上皮へ向かう神経線維も見られた。3)術後7日では歯肉の状態はほぼ正常状態にあった。神経線維も正常状態に回復していた。4)Galaninは正常歯肉でも炎症を起こさせた歯肉でも殆んど観察されなかった。 以上の結果から、歯肉や歯周組織の炎症反応の進行過程と神経ペプタイド含有神経の動態との明確な関係は、見出せなかった。しかしながら、LPSの貼付による炎症はあまり急速で広範囲に及び、実際の慢性辺縁性歯周炎の病態とは随分異なっている。以前、ラット歯肉を切除した実験を行なったが、今回の結果はそれによく似ていた。今後は、実験系を改良し、なるたけ慢性的にかつ緩やかに歯周病変を確立するような実験系を考え、今回同様の観察を行なってきたいと考えている。
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