Research Abstract |
正常有歯顎者の男性5名を被験者として,全部床義歯を想定した厚さ1.5mmの人工口蓋床(P0)と,第1大臼歯部で2mm,4mm口蓋側に臼歯人工歯の排列位置が口蓋側よりに変位したことを想定した人工口蓋床(P2,P4)をそれぞれの被験者に対して作製した.口蓋床に対する違和感をなくす目的でP0を7日間装着させた後,それぞれの人工口蓋床と同じ規格で作製したエレクトロパラトグラム用口蓋板を、P0,P2,P4の順に装着して,被験音を発音させ,音声と口蓋板への舌の接触状態を,一秒間に100回のサンプリング速度でインターフェースを介してコンピュータに取り込み,記録した.分析対象音は,サ,シ,キ,ヒ,チ,リとした.分析項目は,音声時間,音声波形と舌の口蓋板に対する接触との時間関係,舌の形態保持時間,舌の口蓋板に対する接触速度とし,P0装着時をコントロールとして比較検討した. サ音の分析の結果では,人工歯排列位置が口蓋側に移動することにより、コントロールと比較すると, 1.早期に舌が口蓋に接触するが,舌の最大接触速度が遅くなり,通常の時間関係でセバメ形成を行うタイプ 2.舌の口蓋への接触開始時間ならびに最大接触速度には変化が認められないが、セバメの形成時点が送れるタイプ 3.早期に舌が口蓋に接触するが,最大接触時間が遅くなり,かつ,セバメ形成時点も送れるタイプ 4.音声と舌の接触時間関係には変化が認められないが,セバメの形成自体に異常が認められたタイプに分離された. したがって,臼歯部歯列弓幅が狭くなることで、口蓋前方部に調音点をもつサ音の調音運動にも影響が生じることが示唆された. 現在,他の分析対象音についても分析をすすめているが,高速エレクトロパラトグラムを使用することで継続時間の短い子音の分析も可能となった.
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