Research Abstract |
当教室の研究(セラミックファイバー系裏装材を用いた精密鋳造法-埋没条件の違いによる全部鋳造冠内外面の寸法変化-日本補綴歯科学会雑誌1993年37巻89回特別号)では,従来の湿アスベスト法の精度に近い鋳造冠を得る埋没条件を確立することができたが,同時に次のような問題点が確認されている. ・従来の湿アスベスト法と比較して鋳造体の変形のばらつきが大きい. ・埋没材の破壊が見られることがある. ・ワックスパターンの厚みの違いにより内面の適合に相当な違いが見られる. そこで本研究では,これらの問題点を補い,適合精度の良い鋳造冠を得るための埋没条件を明らかにすることを目的として次の基礎的実験を行った. 全部鋳造冠用金型から採得したワックスパターンと,それを厚さ0.5mmのセラミックスファイバー系裏装材と石膏系埋没材の組み合わせで埋没鋳造して得られた鋳造体それぞれを三次元座標測定器を用いて寸法測定した.使用した石膏系埋没材(松風社製、リアルベスト)は専用液を水で希釈することにより総合膨張率を約1.4〜2.2%の間で任意に変化させることができる.今回は希釈率0%(専用液100%),90%(専用液10%)で膨張率を変化させて得られたデータとセラミックファイバー系裏装材とクリストバライト埋没材の組み合わせによる既存のデータとを比較して以下の結果を得た. 1.内面は希釈率0%でマージン方向へ裾開きの膨張を示したが,マージン以外の各部位では,セラミック系-クリストバライトのデータと比べて22.7〜63.5%とかなり減少していた.また希釈率90%ではマージン部分でやや膨張するものの,他の部位では寸法変化はほとんど認められなかった. 2.外面はいずれも大きく収縮する傾向にあり,セラミック系-クリストバライトのデータより若干収縮傾向は強かった. 3.使用した石膏系埋没材の破砕抗力はクリストバライト埋没材の約2〜3倍を示し、昇温中においても破壊や亀裂は認められなかった.しかし鋳造後に急冷した場合でも埋没材は崩壊せず,鋳造体の割り出しはかなり困難であった. 4.今後,希釈率を段階的に変化させ,詳細に比較検討する必要があると思われる.
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