Research Abstract |
わが国では世界に先駆けて接着性レジンセメントが開発され,接着性補綴物の臨床応用が開始された。現在では審美性の追及から金属フレームだけではなくセラミックスを応用した接着性補綴も提案され,その耐久性に関して議論がなされている。本研究ではフッ素系ポリマーを応用した弾性接着に着目し,セラミックスの接着耐久性を改善することを目的として実験を行った。被着体はオリンパスキャスタブルセラミックスを用い,セラミックス用プライマーはクリアフィルポーセレンボンド(クラレ)を用いた。接着剤は市販品であるスーパーボンドC&B(サンメディカル),パナビア21(クラレ),インパーバデュアル(松風),ビスタイトレジンセメント(トクヤマ)の4種類以外に,試作品としてMMA中にビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを30%含み,トリブチルホウ素によって重合硬化させるレジンを調整して用いた。円板状の被着体をメーカー指示に従って鋳造法により作製した。被着面は全てエメリ-紙を用いて研磨後,アルミナにてサンドブラストし,40%りん酸で30秒間エッチングを行った。水洗乾燥後,ポーセレンボンドを塗布し,セラミックスとアクリル棒を接着した。熱サイクル試験後に接着強さを測定した結果,熱サイクル2000回で初めて接着強さに差が現われ,スーパーボンドC&B>試作品>パナビア21>インパーバデュアル>ビスタイトセメントの順に接着強さが高かった。さらに熱サイクル5000回では試作品>スーパーボンドC&Bの順であり,それ以外の市販の接着剤を用いた試料はすべて自然脱離し,接着強さを求めることはできなかった。金属の接着においてフッ素ゴムを応用し,接着耐久性を改善しようとする試みは既になされているが,本結果からシラン処理したセラミックスの接着においても金属の場合と同様に接着剤層の耐熱ストレス性を考慮することで,接着耐久性を改善できることが明らかになった。
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