Research Abstract |
申請者は,平成6年度奨励研究(A)の援助を受け,ウサギの顎関節軟骨の退行性変化の実験モデルを作り,軟骨欠損部位にBMPを補填し,ある条件下において約3週間で軟骨の修復が可能であることを確認した.本研究では,BMPを使用することにおいて,関節円板軟骨欠損(穿孔)の修復が可能か否かを確認し,将来のBMPの臨床応用範囲を拡大することを目的としている. 結果;ウサギでの顎関節円板穿孔(直径3mm)の軟骨修復は不可能であった. (1)ウサギの顎の運動は,開閉口,側方運動が主であり,かつ術後の顎関節の安静を保つことが不可能であるため,BMPを含有したアテロペプチドタイプ.IコラーゲンのPellet状の担体によって穿孔部を被覆したが,顎運動によって早期に崩壊,脱落がおこるため,軟骨細胞を伝導し,軟骨形成による完全な修復を行うことはできなかった.穿孔部の周囲(関節円板と後方結合組織の境界付近)においての担体が残存している部位に,軟骨形成が一部みられたのみであった.しかし,これがBMPにより関節円板の軟骨細胞が伝導してきたものか,関節円板自体の生理的な修復機構によるものかは証明できなかった. 一方,コントロール群である関節円板を穿孔させた後,放置したもの,またアテロペプチドタイプIコラーゲンのみを填入させたものにおいては,どの部位にも軟骨形成はみられなかった. (2)またBMPの担体としてポリ乳酸ポリエチレングリコールおよびポリL-乳酸,ポリ乳酸ポリエチレングリコール共重合体による穿孔部への填入を試みたが,これらの性状は硬質で脆いか,あるいはペースト状で形態を保持することが不可能で,今回の実験における関節円板穿孔の修復に対するBMP応用の担体としては適当ではなかった. (3)山口らのin vitroでの報告で,BMPは未分化間葉系細胞(C3H10T1/2線維芽細胞)を骨芽細胞および軟骨細胞に誘導分化させることが明かであり,そして,この実験での関節円板穿孔部位においては,後方結合組織からの未分化間葉系細胞の供給と血流の酸素供給があり,BMPによって未分化間葉系細胞を軟骨細胞に誘導させることができ,また関節円板から軟骨細胞の供給があるため,軟骨細胞の伝導も容易であることから,関節円板穿孔部のある程度の修復は理論的に可能であると思われる. 現在,新に実験方法を設け,追加実験を進めている.
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