Research Abstract |
再石灰化反応の促進と同反応領域の拡大を目的として,人工的に脱灰したエナメル質にエキシマレーザー光照射と再石灰化液を同時に作用させ,再石灰化液組成および種々の照射条件から検討した。 エナメル質片は,上下顎大臼歯から3片を分離し,脱灰のみ群,浸漬作用群,レーザー光照射と再石灰化液の同時作用群とした。人工脱灰は,0.1m乳酸緩衝液(pH4.5,0.3mM HAp)で,37℃,4hr.振盪して行った。レーザー光照射は,フルエンス:50mJ/cm^2,パルス:1,000〜4,000shotsで条件を設定した。再石灰化液の組成は,Ca:0.3〜0.5mM, P:1.8〜5.3mM, F:0〜5.2mM, NaHCO_3:0〜20mM, CMC:0.5〜1.0%で10条件を設定した。エナメル質片は,1M-KOHにて洗浄後、分析に供試した。エナメル質表面観察は,SEM像およびレーザー顕微鏡で行い,ビィッカース硬度の測定を行った。 大部分の再石灰化液において,レーザー光の照射条件(50mJ/cm^2,4,000shots)を一定にした同時作用群は浸漬作用群に比較して,大部分の脱灰エナメル質表層に明らかな再結晶物質の沈着が認められ、また硬度の回復が良好であった。なかでも再石灰化液(Ca:P:F:3.0mM, 1.8mM, 5.2mM, CMC:1.0%)の同時作用群のエナメル質表層のレーザー顕微鏡像は、浸漬作用群と比較して脱灰により生じた凹凸が良好に修復されていた。さらに、再石灰化液(Ca:P:F:3.0mM: 1.8mM: 0.6mM, NaHCO_3: 20mM, CMC:1.0%)とレーザー光照射の条件を変えて同時作用させたエナメル質表層のSEM像は、レーザー光照射量の増加に伴って再結晶物質の沈着量が増加し、この傾向は硬度の回復とも一致した。 Ca:P:Fの一定組成を有する再石灰化液をエナメル質に作用させ,同時にKrFエキシマレーザー光照射を行うことで,アパタイト様結晶が,光化学反応により誘起される可能性が示唆された。
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