Research Abstract |
調査対象者は,千葉県内の2つの軽費老人ホーム居住者158名と在宅健常老年者107名,合計265名である。2集団の被検者とも通常の生活を営んでいる60〜94歳の老年者である。調査方法は,口腔診査および質問紙による聞き取り面接調査を全被検者に実施した。口腔診査は現在歯,喪失歯,歯周疾患および義歯の形態について調査した。質問紙は個人の社会的環境,口腔内の自覚症状,歯科保健行動・受療行動,食品摂取応答,日常の生活の態度および満足度などで構成した。日常の生活の態度および満足度は食欲,栄養摂取,睡眠,日常生活での不満あるいは楽しみ,身だしなみ,生きがいなどから構成した。 解析方法は,目的変数を日常の生活の態度および満足度の総得点数(0〜12点),説明変数を施設か在宅か,年齢,性差,およびアンケートによる歯科保健の10要因を選択し,段階式重回帰分析(stepwise multiple regression analysis)で行った。また被検者を口腔内所見により,上下顎総義歯装着者,局部義歯装着者,現在歯保有者で可撤性義歯を装着していない者の3群に分けた。上下顎総義歯装着者では,口腔内乾燥感,義歯の満足度,かかりつけの歯科医院の有無,性差,自覚症状の有無が変数選択され,口腔内の乾燥感,義歯の満足度,かかりつけの歯科医院の有無で有意性が認められた。局部義歯装着者では年齢,施設か在宅か,義歯の満足度,就寝時の義歯の取り外し,かかりつけの歯科医院の有無,片側性咀嚼の有無の6つの要因要因が選択され,年齢,施設か在宅かの2つの変数で有意性が認められた。現在歯保有者で可撤性義歯を装着していない者では施設か在宅か,かかりつけの歯科医院,食品摂取応答,1年間の通院回数で高い有意性が認められた。今後このスケールの有用性および妥当性を検討する伴に,咀嚼性を判定するための指標食品を検討する予定である。
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