Research Abstract |
乳歯外傷の維持固定に用いるレジンスプリント材には,乳歯の形態に適合する器材で,十分な機械的強度と簡単な操作性が必要とされる。このような観点から本研究では4官能性ウレタンアクリレートとTEGDMAからなる2種類のベースレジンに,ポリマーとフィラーを配合した3成分系からなる,従来ない新しいタイプのワイヤーレスで一体型の光重合型レジンスプリント材を試作し,その基本組成と理工学的性質との関係及び生体親和性について組織学的に検討した結果,次の結論を得た。 1)試作した3成分系光重合型スプリント材の中で最も優れた機械的性質を示した最適組成はベースレジンにX4モノマー,ポリマーにエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合物(#300)を配合したもので,モノマー/ポリマー/フィラーを57/28/15wt%の重量比で配合したものであった。 2)この組成の試作スプリント材は調整後2日間にわたって稠度が増加し,その後は臨床操作に適する可塑性を示した。 3)試作スプリント材の曲げ強さは,2週間の水中浸漬によってやや低下したものの,弾性係数はほとんど影響を受けず、その後は30日間の浸漬後も顕著な低下は認められなかった。 4)試作スプリント材の酸処理エナメル質への接着力は水中浸漬30日後も低下せず,12〜18MPaの接着力を示した。 5)試作したスプリント材はいずれも30秒の光照射で10mm以上の硬化深さを示し,良好な光硬化性を有していた。 6)試作スプリント材のヌープ硬さは16〜20程度の値を示した。 7)試作スプリント材の生体組織への影響については,現在使用されている可視光線重合型コンポジットレジンや即時重合レジンと同程度であり,とくに組織為害性の所見はみられなかった。
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