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¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
本研究では木賃地区をバランスのとれた社会階層・年齢構成をもつ良好な住環境へ改善していくための方策を探ることを目的としているが,まず木賃居住者層の実態を把握するための調査を実施した。調査は,大阪市門真市の市街地住宅密集地区再生事業の整備地区において,(1)木造賃貸住宅と,更新後の代表的な住宅である(2)非木造賃貸住宅および(3)小規模戸建住宅を取り上げ,各々の居住者特性,住居歴,住要求について比較検討を行った。有効回収数は(1)152(2)138(3)97票である。その結果,(1)〔木賃〕の属性は,世帯年収では公営住宅居住者とほぼ等しい低収入層であり,家族型では世帯主が50代以上の「夫婦+子」または「単身」が多い。(2)〔木賃〕の家賃は〔非木造〕の半額であるが,約4割が最低居住水準以下であり,住宅の安全性に不安を持っている。(3)〔木賃〕では,立ち退き等の理由によって周辺の木賃住宅から現住宅へ転居したものが多く,〔非木造〕の結婚等を理由とする親の家からの転居,〔戸建〕における家族の成長を理由とする転居とは異なる居住歴を有している。木賃から非木造や小規模戸建への転居は少なく,更新住宅への移動はかなり限定されている。(4)〔非木造〕では6割が将来転居を考えているのに対し,〔木賃〕では「住み替えたいができない」「このまま住み続ける」という木賃沈殿層が中高年層や低収入層を中心に5割以上みられた。この理由はおもに経済的なもので現在以上の家賃負担が困難であることが示唆された。(5)賃貸住宅への転居希望や持ち家取得の可能性から,〔木賃〕においても比較的年収が高い30代を中心に転出可能な層が存在するが、その数は少数である。以上,木賃居住層が,更新住宅居住層とは異なる諸特性を持っていること,自力で住居水準を向上させていける層が木賃層にも少数存在していること,自然発生的な更新が進むなかで木賃沈殿層がかなりの割合で顕在化しつつあることを明らかにした。
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