Research Abstract |
天然食品添加物(天然添加物)は毒性に関する基礎データの蓄積が不十分である.人は日常的に複数の環境化学物質を摂取しており,生体内では化学物質間でその代謝,作用,毒性に関して相互作用があると思われる.好ましくない場合は,有害化学物質の毒性が他の物質の影響で増強されるおそれがある.本研究では,既知の毒物の投与によって実験的に動物に発生させた肝毒性および腎毒性が,天然添加物の併用投与により抑制または増強されるかどうかを検討し,修飾作用をもつものが見出されたとき,関与する成分を検索しようとするものである. 実験材料は,厚生省のリストに収載の約1,000品目の天然添加物の内,着色料の市場データを参考にして,国内需要量の多いアナト-色素,コチニール色素,クチナシ黄色素,クチナシ青色素,カカオ色素の5品目の天然色素を選択した.肝毒性と腎毒性を発現させるためにクロロホルムをマウスに腹腔内投与した.色素は,クロロホルム投与1時間前に経口投与した.各色素の投与量は,色素の精製水あるいはオリーブ油への溶解度が許す限りできるだけ大量投与することを基礎に,そのLD_<50>の約1/3とした. 結果はまず,アナト-色素とクロロホルムの併用投与は肝毒性の指標の血清GPT値および腎毒性の指標の血清尿素窒素値などに有意な変化を示さず,アナト-色素はクロロホルムによる肝毒性および腎毒性に影響を与えないことが認められた.その他の各色素とクロロホルムの併用投与の結果は,各処理群高い確率でマウスの死亡が認められ,特にクチナシ黄色素とクロロホルムの併用投与による死亡率が高かった.しかし,死亡により血清GPT値と血清尿素窒素値などの変動の追跡が困難であった.今後,肝毒性と腎毒性の生化学的毒性評価による比較検討を実施できるよう色素投与量を減少して再検討する必要があると考えられた.
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