Research Abstract |
本研究は,数・図形分野に焦点をあてたマルチメディア教材の作成とコンサルテーションシステムの開発を目的とし,対象を学習障害児におき,「1.数認識,図形認識の調査」,「2.(1)数・図形の学習援助システムの作成,(2)指導者用のコンサルテーションシステムの作成」について研究を行った。 具体的には,1では、算数の初歩的つまづきについて,文献調査と,倉敷市立と近畿圏の小学校教員への質問紙による調査(つまずきの実態とその対処法)から資料を収集した。これより,障害児教育においては算数・数学教育には大きな進展が見られないものの,学習障害児においては,環境を整えること,日々の生活を通じて概念を養うことが大切であることが指摘され,健常児の学習指導を基本にしながら多様な対処法が回答された。 2では,1に基づき,身の回りの事柄から数・図形概念を養っていくために,次のようなマルチメディア教材を試作した。すなわち,画面に日常のある場面が表示され,キ-になる部分(たとえば,食器棚)をクリックすると実写によるビデオ映像(コーヒーカップとお皿を合わせる)が流れるコンピュータ支援ソフトである。量概念,図形概念,計算の初歩について作成している。これを実体験の前後に用いることで,身の回りの数的,図形的要素(1対1対応)に気づかせるものである。(2)については,1により集めた情報から,つまずきに対応した対処法を整理する形で実現した。 以上より,マルチメディアによる教材開発および利用の可能性を明らかにすることができた。本システムは学習障害児のみならず,通常の算数・数学教育にの利用できるので,今後は静止画像を含んだより広範なシステムと,コンサルテーションシステムとリンクさせたシステムの開発の計画がある。
|