Research Abstract |
本研究の目的は,これまでに提案してきている開発プロセス記述用のペトリネットモデルを実用的観点から改良すること,及び,そのモデルに基づいたシミュレーションシステムを実現することである.このシステムを用いることで見込まれる品質と生産性の向上を実際の開発プロジェクトからのデータを利用してシミュレーションで具体的に求めることが可能になり,ソフトウェア開発プロセス改善を効果的に行うことが可能となる.今年度の研究は次の研究計画(1)〜(3)に沿って行なった.(1)開発プロセスを記述するためのペトリネットモデルの拡張,(2)モデル記述に基づく開発データ収集手法の確立,(3)シミュレーションシステムの開発と評価.主な成果としては,ペトリネットモデルに新しく"作業量"という概念を導入してソフトウェア開発における人的要因の影響を動的に反映する機構を実現したことである.従来のモデルでは,開発の各工程の作業時間を予め与える必要があったため,シミュレーションで得られる開発期間の値は常に一定となるという問題点があった.今回の拡張により,様々な動的要因の相互作用の結果として生じる納期のズレの問題をモデル上で考慮することができ,より現実に近いシミュレーションが可能になった.また,試作したシミュレーションシステムでは,グラフィカルユーザインタフェイス(GUI)や統計処理,各種データベースに関する機能を実現し,高い実行効率と使用性を可能とした.更に,ある企業における実際のソフトウェア開発プロセスに対して,提案したシミュレーションシステムを適用し,開発現場の実状を反映した事例のシミュレーションを行なった.その結果,実際の開発現場に即したプロセスの定量的評価,改善予測を提案したモデルで行なえることが確認された.
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