Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
細菌鞭毛モーターは、細胞膜の外から内へのH^+またはNa^+の流入と共役して鞭毛を回転させる分子機械である。Na^+駆動型モーターは生体エネルギー論的解析には有利だが、遺伝学的・生化学的解析はあまり進んでいなかった。昨年度までの研究で、私は、海洋ビブリオ菌Vibrio alginolyticusから、Na^+駆動型である極毛の形成能、回転能または走化性応答能の欠損した突然変異体を多数単離し、それらの性質を解析した。また、この菌を用いたエレクトロポレーション法を確立し、極毛形成に必須な遺伝子(rpoN)と回転に必須な遺伝子(motY)のクローン化に成功した。本年度は、(1)motYおよび新たにクローン化された回転に必須な遺伝子の塩基配列を決定し,それらの発現を制御する系を開発した.また,(2)一本の極毛モーターの出力の精密測定も行った.さらに,極毛は運動器官であるばかりでなく,粘性の変化に伴う細胞分化に際して粘性センサーとして機能する.そこで,(3)このユニークな性質について,ナトリウム駆動型モーターの阻害剤を用いて解析した.(1)の結果,極毛モーター回転に必須な膜貫通型コンポーネントが4つ(PomA,PomB,MotX,MotY)同定された.とくに,それらのうち2つ(PomAとPomB)は大腸菌のH^+駆動型モーターにおいてイオンチャネル部分を形成するMotA,MotBと相同性があることから,イオン特異性の異なるモーター同士の比較解析が可能になった.(2)は具体的には,最近開発されたレーザー暗視野顕微測光システムを用いて極毛回転を高い時間分解能で測定した.その結果,毎秒1000回転以上もの高速で回転することや,駆動力を下げたり阻害剤を与えたりして回転速度を下げても,かなり安定に回転すること(熱揺らぎの影響は受けるが)などを明らかにした.(3)の解析の結果,ビブリオ菌は極毛にかかる力や極毛の変形を感じているのではなく,極毛モーターの回転速度または極毛モーターを通るNa^+イオンの流入量の変化を刺激として感じていることが明かとなった.これらの成果については、すでに発表済みまたは投稿準備中である。
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