Research Abstract |
本研究では,酵母無細胞タンパク質合成系を元にしてサイトゾル中のSsaタンパク質の量を制御できる実験系の開発を行なった.まず,Ssa1タンパク質のC末端部分に(His)_6タグを導入した組み替えタンパク質(Ssa1-Hisp)のみをSsaタンパク質として発現している酵母株より,Moldaveらの方法に従って無細胞タンパク質合成用の酵母ライセ-トを調製した.次に,(His)_6タグに対するアフィニティーカラムであるニッケルレジンカラムを用いて,この酵母ライセ-トからSsaタンパク質を除去する条件の検討を行なった.その結果,タンパク質合成能を保持した状態でライセ-ト中のSsaタンパク質の85%を除去することができた. Ssaタンパク質を除去した酵母ライセ-トを用いてミトコンドリアタンパク質前駆体(pCOXIV-DHFR,F1β前駆体)を合成し,単離ミトコンドリアへの輸送実験を行なったところ,これらは共に,Ssaタンパク質除去前のライセ-トを用いて合成した場合と同程度の輸送効率でミトコンドリアに取り込まれた.抗Ssaタンパク質抗体はこれら前駆体の単離ミトコンドリアへの輸送を阻害したので,Ssaタンパク質は前駆体のミトコンドリアへの輸送に必要であることが示唆される.そこでこれはSsaタンパク質の除去が不十分であったためではないかと考えられる.現在,誘導可能なプロモーターであるGAL1プロモーターによるSSA1-His遺伝子の発現制御と組み合わせて,Ssaタンパク質の除去効率の改善を行なっている. Ssaタンパク質の活性はパートナータンパク質であるYdj1pによって制御されている.パートナータンパク質の側からSsaタンパク質の活性制御を行なうため,YDJ1遺伝子破壊株から酵母ライセ-トを調製した.このライセ-トを用いて合成した前駆体タンパク質の性質についても,現在解析を進めている.
|