エリザベス朝演劇批評におけるアナモルフォーズ(歪像画法)の概念の適用の研究
Project/Area Number |
07801064
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
英語・英米文学
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
蒲池 美鶴 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (80128420)
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Project Period (FY) |
1995
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1995)
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Budget Amount *help |
¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1995: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | エリザベス朝 / 演劇 / アナモルフォーズ / 文学批評 / 美術史 / イコノロジー / 思想史 / 『トロイラスとクレシダ』 |
Research Abstract |
発表論文では、アナモルフォーズの手法を文学批評に応用する一つの例として、『トロイラスとクレシダ』の中の‘sleep kill those pretty eyes'と言う台詞を分析した。トロイラスが恋人クレシダに向かって言う言葉として‘kill'は実に不適切であり、これを‘lull'に直してしまう学者が多い。その場合、トロイラスの目に映るクレシダ像は「無心に眠る赤ん坊」となる。ところが‘kill'をそのまま残してこの場面にアナモルフォーズの鏡を掲げる時、そこには思いがけない他の図像が映っているのが見えてくる。 まず浮かび上がるのは、「眠り」の赤ん坊と「死」の赤ん坊、そして彼らを抱く母親である「夜」の魔女である。さらにその背後には、百眼のアルゴス、メヂュ-サ,バンリスクといった恐ろしい眼の怪物たちの姿が透けて見える。‘eye'(眼)=‘I'(自己)が病んでいる、というシェイクスピアの洒落は、眼の病が自己のアイデンティティーの病でもあるという認識につながる。近代の初頭にあってシェイクスピアはすでに、「自我」という牢獄の中に閉じこめられた現代人の苦悩を見抜き、救いへの唯一の道はその「自我」をいったん「殺す」(‘kill')ことにある、と示唆しているのではないだろうか。 象徴的な死と精神の再生への願い、というテーマは後のロマンス劇の中に受け継がれていく。現在執筆中の論文では、『テンペスト』の中の‘Those are pearls that werw his eyes'という一行の背後に隠されたアナモルフォーズの図像を照らし出すことによって、「自我」の死と「本当の自己」の再生が描き出される様を明らかにしていく予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
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