Research Abstract |
平成7年度の研究実績は,2つの点に集約される。 研究実績の第1は,今まで公表してきた台湾製糖・台湾拓殖を中心とする植民地企業経営の歴史に関する緒論稿を,博士論文「植民地企業経営の比較史的研究-アジア経営史研究序説-」という形でまとめた点である。植民地期朝鮮の企業経営との本格的な比較・検討については今後の研究課題とせざるをえなかったものの,植民地経営全体の性格と中心的役割を担った植民地企業の性格との間に相関関係が存在した,という仮説が実証されつつあることの意義は大きいと言えよう。なお,同論文については,日本経済評論社から『植民地企業経営史論-「準国策会社」の実証的研究-』という題目で出版される予定であり,そのために平成8年度の文部省出版助成を現在申請中である。 第2の実績は,上記論文の研究の中心をなした「準国策会社」や国策会社との比較を念頭に,民間会社として自由裁量が残された経営環境のもと,積極的な経営多角化を展開していった明治製糖の事例を考察した点である。そもそも同考察は,台湾製糖の「準国策会社」的性格のマイナス面を,民間製糖会社の側から明らかにすることを主眼としたものであったが,「革新」的企業者活動と「後発企業効果」という観点からも注目すべきテーマであることが確認された。「革新」的企業者活動と「後発企業効果」との因果関係をめぐる理論的分析や,その具体的事例研究となる明治製糖の多角的経営に関する本格的研究については現在進行中であるが,その一環として,相馬半治の「革新」的企業者活動が後発製糖会社である明治製糖に積極的な経営多角化をもたらした点については,「明治製糖株式会社の多角的経営方針-相馬半治のリーダーシップと『後発企業効果』-」という形で公表した。以上が,平成7年度の研究成果である。
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